沖縄のお盆用語について知りたい方へ。
沖縄は独特の文化が多く、内地とは異なる点が多いです。
移住して初めてのお盆を迎える方にとっては、不安に感じる事も多くあるのではないでしょうか。
私は、沖縄出身のウチナンチューで、子供の頃からお盆で親戚周りをしてきたのでお盆は慣れたもんですが、内地から来たわたしの嫁さんにとってそうではありませんでした。
東京出身のいわゆる「ナイチャー嫁」である彼女は、初めてのお盆を知識が全くない状態で迎えてしまったので、とても苦しみました。
その時の経験を元に書いているので、
前もって必要な方言や知識を知っておきたい!という勉強熱心な内地嫁の疑問にお答えできると思います。
この記事を読む事で、少しでも不安を取り除いてもらえたら幸いです。
沖縄のお盆(旧盆)【期間を表す方言用語】
沖縄のお盆は3日間に渡って行われ、それぞれの日に役割があるので、事前に覚えておくと流れがわかって過ごしやすくなります。
沖縄は旧暦で行事を行う事が多いので、お盆の日程も毎年変わります。2020年は8月31日(月)〜9月2日(水)です。
その①:ウンケー(お盆1日目)
ウンケーはお盆の1日目を指す方言で、旧暦7月13日の事です。
お盆は3日目がメインというのが沖縄の一般的な考え方なので、1日目は訪問客はあまり多くありません。
仏壇のある家は、夕方から家の門で祖霊のお迎えを行うので、料理やお供物の準備などで、結構忙しくなります。
長男のお嫁さんは手伝う事が多く、慣れないうちはアタフタするかもしれません。
それに、親世代は7•8人兄弟がいる事も珍しくないので、いきなり親戚の中に放り込まれてしまうと、誰が誰なのか分からずに不安になると思います。
前もって旦那さんに家系図を作ってもらうと、覚えやすくていいのかもしれません。
お盆の流れや親族の方言やコミュニケーションが難しい場合は、旦那さんに慣れるまではフォローして貰った方がいいと思います。
じゃないと、スマホに夢中になったりと、ほったらかしにされる恐れがあります。
ちなみにわたしは前科持ちです・・・。
その②:ナカビ、ナカヌヒ(お盆2日目)
ナカビはお盆の2日目を指す方言で、旧暦7月14日の事です。
3日間の「中日」からきていて、沖縄の方言の中では珍しくわかりやすい言葉ですね。
ナカビは大きな儀式がなくてあまりやる事がなさそうなイメージですが、混雑する3日目を避けたい親戚がちょくちょく訪問してくるので、忙しい時間帯があったりします。
親戚回りの数が多くて面倒に感じている人は、ナカビの午前中~昼前あたりを狙っていくと、さっと行ってさっと帰れるのでおすすめです。
その③:ウークイ(お盆3日目)
ウークイはお盆の3日目(最終日)を指す方言で、旧暦7月15日の事です。
ウークイは祖霊をお見送りする日で、お盆の最後を締めくくる一番大事な儀式も控えています。
お見送りは祖霊にゆっくりしていってもらうという観点から夜遅くから始まります。
仏壇の前であの世のお金や食料を燃やし、一通り儀式を終えたら家の門に出て、祖霊に感謝を伝えて「また来年も来てください」と皆で見送ります。
お盆のハイライトともいえるウークイですが、仏壇がある家は「戦場」と例えられるくらい、バタバタと忙しい一日になります。
歴史のある家系(本家)では一家総動員させられ、長男の嫁さんだけではなく、次男や三男の嫁さん達も全員集合することも珍しくありません。
ほとんどの家の男性陣は、ウークイの日と翌日に二連休をとる事が多く、夜遅くまでお酒を飲んでワイワイと楽しく過ごします。
しかし、ここが夫婦で1番の火種ポイントになってしまうのです・・・
嫁さんは慣れない中で一生懸命お客さんを出迎えたり料理のお手伝いをしているのに、旦那は何も手伝う事なく楽しそうにお酒を飲んだり遊んだりしています。
しかも旦那は悪気が全くないので、より一層腹が立ちます・・・。
わたしの周りでは、大体このパターンで喧嘩している夫婦がほとんどです。
女性陣ばかりが働いて男性陣は飲んでいるだけというのは、沖縄では当たり前の光景になっていますが、内地嫁さんからすると理解ができません。
「こっちは大変な思いをしているのに、自分さえ楽しければいいのか!?」と心の中で叫んでいる事でしょう。
帰るときにお嫁さんに運転をしてもらって、旦那さんは眠っているというパターンもある様です。
お嫁さんも慣れないなか頑張ってくれているので、お盆の後は必ず感謝の気持ちを伝えてあげてください。
ありがとうと言われたら、来年もまた頑張ろう!!と思ってくれますよ。
その④:シチグヮチ(お盆3日間に渡る祖先祭祀)
お盆全体を指す言葉です。
若者で使う人はあまりいませんが、年配の人たちは「今度のシチグヮチとうするねー?」という感じで、頻繁に使います。
わたしの祖母の世代はほぼ全員使っていたと記憶しています。
沖縄のお盆(旧盆)【儀式に関する方言用語】
お盆では3日間を通して、仏壇の前でたくさんの儀式を行います。
その時に使うものや関連する方言をまとめてみました。
その①:ウヤファージ(ご先祖様)
ウヤファージは、ご先祖様のことを指します。
お盆はウヤファージのために行う行事なので、覚えておきたい方言ですね。
その②:グソー(死後の世界、あの世)
グソーは死後の世界を指すとても神聖な言葉ですが、わたしが小学生の頃に一時期流行った事があります。
どんな場面で使ってたかというと、喧嘩した時とか気に入らない事が起こった時に、「やー、まじで、グソーだからな」と使っていました。
訳すと「お前、まじ、死後の世界だからな」です。
今考えるとなんちゅう使い方をしてたんだ・・・と後悔しています。
その③: トートーメー(仏壇位牌)
仏壇位牌のことを指します。
位牌にはご先祖様の名前が入っているので、位牌の大きさでご先祖様が多いかわかります。
長男の長男(本家)の家は、大きくて立派な位牌がある場合がほとんどです。
その④:ウートートー(先祖や神仏に手を合わせる)
これは祖霊に対してお祈り・拝むという意味です。
親戚回りの時に、「いらっしゃい。トートーメーでウートートーして」と言われたら、仏壇の前で線香立ててお祈りしてね、という事です。
結構よく言われる言葉なので、この組み合わせは覚えておいた方がいいでしょう。
その⑤:ヒラウコー(お線香)
沖縄の方言でお線香という意味ですが、わたしはほとんど使いません。
年配の方も今では「お線香」と言う方が多いです。
一回だけ親戚のオジーから「ヒラ・・◯△□」とよくわからないことを言われので、一か八か線香のことですか?と聞くとそうだっというパターンがありました。
その⑥:グーサンウージ(先祖が使うサトウキビの杖)
グーサンは杖を指し、ウージはサトウキビの事を指します。
これは祖霊があの世に帰る時に、転んでしまわないようにするものです。
どの家庭でも一年に一回はグーサンウージでチャンバラごっこをして怒られる子供が出ます。
その⑦:ウチャトー(お供えのお茶)
ウチャトーはウンケーで用意したら、翌日のナカビーにも朝一で新しくあげ、ウークイも同じように朝一であげます。
うっかりしていると、昼過ぎに「あっ、朝一であげてない・・・」と気付いたり、翌日まで持ち越して「二日分あげよーね」という強引な手段に出るおばーもいたりします。
そんな時に率先して気づき「ウチャトーあげましょうね」と言えば感謝され、株が上がる事間違いなしでしょう。
その⑧:ウンケーダーグ(お盆1日目にお供えする7個2皿の白玉団子)
ウンケーの日に用意する団子ですが、お供物なので儀式が終わるまでは手をつけたらNGです。
親戚の中で少なくとも1人は団子好きがいるので、つまみ食いされないように、目を光らせておきましょう。
その⑨:ウサギムン(お供物)
グーサンウージ、ウチャトー、果物など、トートーメーにお供えした物達の総称です。
その⑩:ウチカビ(あの世のお金)
ウチカビは祖霊があの世て使うお金です。天国でお金に困らない様にします。
お見送りの時に、一家の家主や長男が仏壇の前で火をつけて燃やしていきます。
燃える配分を考えながら燃やしていかないと、火が消えたり、火が大きくなって火傷したりするので、意外とテクニックがいります。
わたしも挑戦した事がありますが、間違って畳に落として焦がしてしまい、祖霊と一緒にお見送りされそうになりました。
普段やり慣れていない人が燃やし始めたら、ソーシャルディスタンスを広めにとっておいた方が安全でしょう。
その⑪:ウサンデー(お供え物を下げる、いただく)
ウサンデーはお供物を下げる・いただくという意味があり、「ウサンデーサビラ」と言いながらか皆で食べます。
そうする事で祖霊からの御加護がもらえるからです。
この言葉が出たら、「食べてもいいよ」と言うサインなので、腹ぺこの時はかなりテンションが上がります。
ただ美味しい物はライバルも多いので、目をつけていた物をいかに早く自分のものにするか、という椅子取りゲームのような展開になる場合もあります。
相手が大人であれば心置きなく本気を出せますが、子供の場合だと譲ってあげないと「大人気ない奴」というレッテルが貼られるので、子供に人気のありそうなやつは捨てる、というのも立派な戦略と言えます。
沖縄のお盆(旧盆)【食事に関する方言用語】
お盆の食べ物は沖縄の伝統的な料理がたくさん出てくるので、覚えるのがなかなか大変です。
その中でも代表的なものを紹介していきたいと思います。
その①:中味汁またはナカミー(豚のモツを使ったお吸い物)
中身汁は豚のもつを使ったお吸い物で、わたしも嫁さんも大好物です。
ただ、モツは内臓なので苦手な人は苦手かもしれません。
そんな時は、生姜を多めにかけると独特の匂いが薄まるので、かなり食べやすくなります。
その②:ウンケージューシー(お盆1日目にお供えする炊き込みご飯)
ウンケージューシーはウンケーの時にお供えする沖縄風炊き込みご飯です。
ひじきや人参、豚肉などが入っており家庭ごとに具材が違います。
お盆とは全く関係ありませんが、北谷にある「浜谷そば」という沖縄そば屋さんのジューシーはとっても美味しいのでオススメです。
その③:イリチャー(切り干し大根、昆布、こんにゃくの細切り炒め)
イリチャーはお盆だけでなく、普段からよく食べる定番のおかずです。
訪問客に出すメニューとして、中身汁・ジューシー・イリチャーの3点セットがよく出てきます。
ただ少し残念な事に、わたしが見たところ、イリチャーを食べ残す人がダントツで多かったです。
美味しくてわたしは好きなんですが・・・何故かお盆の日になると輝きが消えるんですよね。
これはお盆の七不思議の一つとして認定したいです。
その④:三枚肉(豚バラ煮込み料理)
三枚肉は豚の角煮をスライスした、豚バラ煮込み料理です。
沖縄の伝統的な食べ物で、行事毎には欠かせない料理です。
ご飯が進むおかずとしても有名で、わたしの友達は「三枚肉のせいで沖縄はメタボが多いんだ!」と嘯いています。
その⑤:御三味ウサンミ(お供え用の重箱料理)
御三味ウサンミとはいわゆる重箱料理の事で、お盆のお供物として欠かせません。
カマボコ、ゴボウ、昆布、三枚肉、豆腐などが入っています。
その⑥:カメーカメー(食べなさい食べなさい)
これは内地嫁の間では有名な方言で、いわゆる「カメーカメー攻撃」とも呼ばれています。
主にオジーオバーが繰り出してきます。
食べ物をたくさん勧めてくれるのはありがたいですが、親戚回りの数が多いと、とても全部は食べきれません。
ご飯を用意してもらってから残すのは悪いので、「さっき食べてきたから、飲み物だけもらいましょうね」などと上手くかわしましょう。
断れずに口車に乗せられ食べ続けてしまうと、終盤のフードファイターみたいに苦しむことになるので、注意が必要です。
沖縄のお盆(旧盆)【番外編】
その①:エイサー(お盆の時期に踊る、沖縄の伝統芸能)
エイサーは沖縄の伝統芸能で、三味線を弾きながら唄う音楽に合わせて、小太鼓・大太鼓・踊り子達が陣形を作り、一心同体となって踊ります。
エイサーはお盆で現世に戻ってきた祖霊を送迎するためのもので、学校の授業でも取り入れる所があるくらい、県民にとって身近なもとなっています。
また、毎年全島エイサー祭りという島中をあげての盛大な祭りが開催されており、各地区の青年会が凌ぎを削って踊る姿を見る事ができます。
わたしも小学生の頃に、親に無理やりエイサー倶楽部に入部させられましたが、今となっては良い思い出です。
※2020年は新型コロナウィルスの影響で全島エイサー祭りは中止になりました。
その②:道じゅねー(地区の青年会がエイサーを踊りながら道を練り歩く)
道じゅねーは、旧盆の時期に各地域の青年会がエイサーを踊りながら道を行ったり来たりする事で、主に夕方から夜遅くまで行われており、深夜0時を回っても街中にエイサーの音楽が鳴り響きます。
普段やったら絶対クレームが来るでしょうが、この時期だけは特別なので、太鼓の音が聞こえてきたらテンションが高くなります。
家の前に来た道じゅねーを見に行って、そのままついていったら遠くまで行きすぎた、という経験は地元民なら誰もが持っていたりします。
※2020年は新型コロナウィルスの影響でみちじゅねーは中止になりました。
まとめ:方言用語を覚えるよりも旦那さんの協力が大事
この記事ではお盆に関する方言用語について、「とりあえずこれさえ覚えとけば大丈夫」というものを、内地嫁さん目線で抜粋して紹介してきました。
方言はたくさんあって全部覚えようとしたらキリがありませんが、この記事の用語を何となく頭に入れておけば、初めてのお盆でもなんとかなります。
ただし、旦那さんの協力がないと嫁さんのメンタルがやられてしまうので、お盆を無事に過ごせるかどうかは旦那さん次第ともいえます。
嫁さんは初めてのお盆で不安になっているので、旦那さんは気を使いすぎるくらい使って、嫁さんをフォローしましょう。
夫婦で協力して素敵なお盆を過ごせるきっかけになれば嬉しいです。
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